こころ、動く

元雑誌編集者が心動いたことをまとめます

【クレームの出ない取材術の基礎】3000人以上を取材した現役ライターの取材術第1弾

こんにちは、自分工房です。

人付き合いが得意ではない私ですが、編集・ライターとして仕事をしてきたこの十数年間でおそらく3000人を超える方々のお話を伺って、記事にしてきました。

そのくらい場数を踏んでも、取材は好きではない私ですが、好きではないからこそ、クライアントに満足してもらえるように・クレームを出さないために身についた技術があります。

取材が負担になっている新米ライターの方の参考になればと思い、

この十数年間行ってきた取材の方法についてご紹介したいと思います。

 いい記事かどうかは、取材の前ですでに決まっている


UK Business Secretary, Vince Cable at the GREAT British Festival in Chennai, during his visit to India / bisgovuk

取材の始まりは、取材当日からと思っていませんか?

私の経験をベースにいうと、8割がた取材の前に取材が終わっているといっても過言ではありません。

では、取材前になにをしたらいいのか、私が感じるところをご説明したいと思います。

1.媒体の読者とはだれかを考える

多くの方は、まず取材対象者の情報調べから始めようとすると思います。

そういうやり方もありますが、私は

ターゲッティングを先にした方がより必要な情報を絞り込め、時短になると思っています。

私がおすすめする取材のために一番最初にすることは、

読者のターゲッティングです。

(広告・コンサル業の方は、「ペルソナ」といった方がなじみがあるかもしれません。)

そんなの知っているよという方も多いと思いますが、ここが一番頭とセンスを使う難所だと思います。

書こうとしている媒体のターゲット属性が定まったら、さらに一層掘り下げ

クライアントが情報を発信していきたいコアなターゲットに的を絞ります。

 

  1. これから、取材し記事を掲載する媒体はどんな媒体でしょうか?
  2. そして、なにを目的とした記事なのでしょうか?

この2つを見失うことがなければ、取材記事としてそれなりの記事が書けます。

コアなターゲットが異なると取材対象者への質問が異なってくる


Project 366 #239: 260812 Stay On Target! / comedy_nose

わかりやすい違いを例に挙げると、

新作映画の販促のための芸能人の媒体露出

求人広告作成のための社長取材では

当然ながら意識するターゲットは異なります。

新作映画の販促のための芸能人の媒体露出は、もちろん映画の販促が絶対目標ですよね。

映画の観客層を睨んだ話題作りのための取材なのですから。

  • 映画への興味を抱く布石とすること
  • 主役級の芸能人の好感度をあげること(映画の中でのキャラへの興味)

映画の販促記事と求人記事との違いは、わかりやすいですよね。

ここでターゲットをつかんだ気になって取材を始めてはいけません。

媒体の違いを認識したことで満足しきって、

媒体の違い=コアなターゲット把握

と、勘違いしていませんか?

 

コアなターゲットとターゲット層の違いを把握していくために、映画販促の記事についての言及をもう少し続けます。

例えば、こんな風に書けばわかりやすいでしょうか?

媒体の違い(読者層の違い)…映画の販促記事か企業求人か

コアターゲット…恋愛映画の好きな女子・ヒューマンドラマを観たい30・40代の男女・アクションヒーロー映画を見たいキッズ(あくまでも例です)

 

同じ取材対象者を相手にしていても、ジャンルが異なると観客層も異なり、取材内容も、アプローチも異なります。

つまり、引き出したい話も異なってきます。

Target1 恋愛映画の観客を意識した場合

映画のジャンルが恋愛なら、恋愛の要素は欠かせません。

芸能人の口から観客に疑似恋愛や「異性としての意識させること」が記事のポイントとなります。恋愛の要素から映画の最大の見どころに落とし込むでしょう。

Target2ヒューマンドラマの観客を意識した場合

1のような内容を書いたとしたら、配給会社や芸能プロダクションから大クレームが来ることなど目に見えていますよね。

ファミリー系のヒューマンドラマなら、芸能人の理想の家族像や映画とリンクする感動的な話を引き出したいところですよね。

 

2.クライアントのニーズの把握


Target / kevin dooley

多分、世の中の執筆案件としては映画の販促記事よりも

企業サイトや企業求人の記事の発生件数の方が明らかに多いと思います。

上で映画の記事の話をしたかというと、コアターゲットのお話をしたいからです。

映画のジャンルを例に挙げたので、それぞれのコアターゲットの違いがわかりやすいように思うのですが、実践の場ではこんなにわかりやすくありません。

そこで、媒体の違いを把握しているだけなのに、

コアターゲットまで把握できたと勘違いしてしまうミスはとても多いのです。

 

デフォルメが効いた恋愛・ヒューマン・サスペンスなどよりも、

企業サイトを制作する際のコアターゲットへのニーズ把握の方が難しいと思います。

それは、なぜか。

クライアントの気持ち次第で変化してしまう可能性が非常に高いからです。

↑これは、本当に残念なお話ですけどね…。

クライアントのコアターゲッティングがずれると、記事制作に影響します。

企業サイトはよく修正やクレームが起きますが、多くの場合はこのニーズの変化や共有ミスによるものが多いです。

デフォルメを効かせるため、映画の話に戻すと

クライアントの頭の中で「恋愛ジャンル」というオーダーが、納品時までに「やっぱり、アクション戦隊もの!」と変更されている可能性があるのです。制作になれていないクライアントほど起きがちなハプニングです。ライターとしては、たまったものじゃありません。

 自分の身を守るためにしたいこと

何日も徹夜を続けたくありませんよね。

すべてのクライアントの気持ちがコロコロと変わるわけではないですが、

できるだけ、書き直しは避けたいものです。

双方のご認識を早いうちにキャッチするため私がやっていることは、

コアターゲットのプレゼンです。

 

プレゼンの効果

プレゼンの効果は3つあります。

  1. クライアントのために親身になって動いているという好印象を持ってもらえる→かなり、信頼されることになります
  2. クライアントの記事に対する欲求がぶれにくくなる
  3. 自分の執筆スタイルもぶれにくくなる

初期段階でぶれる要素をつぶしておくことで、後々の手間を省こうという考えです。

→この内容は書き始めると長くなるので後日詳しく書きたいと思います。

クライアントの属性によって、アプローチ方法が異なってきます。(営業さんにもおすすめな内容かもしれません)クライアントのニーズが移り変わらないように、プレゼンしながらコアターゲットがぶれないように釘を刺しつつ確認しています。

 

3.取材対象者の情報の読み込み


Recent, present and future reading material / Arria Belli

取材対象者についての、得られる限りの情報を読み込むことが良い取材をする近道です。

ですが、むやみやたらにすそ野を広げて調べる必要はありません。

上の二つでわかっていただけたとは思いますが、記事にするための必要なアプローチは決まっているからです。(ただし、無駄に思えることも、話を引き出す話題として役には立ちます。時間がある場合は、しっかり読み込んだほうが慌てません。)

 

1.2.の内容をクライアントとすり合わせ、記事の方向性まで話をしていれば、後は自分が描いた記事の流れに落とし込むだけです。

なかには、

「いくつかの質問を考えて取材に臨み、取材で相手から情報を引き出せばいい

と思っている方もいらっしゃるかもしれません。

それは、ある程度経験でカバーできる方の発想です。

取材対象者の職業属性や取材ジャンルの取材傾向など、バッググラウンドの知識に頼って質問を膨らませ、取材対象者を自分の記事の流れに誘導する方法も確かにあります。

(しかし、私はあまりおすすめしません。突発的に発生した取材には有効ですが、メインインタビューでこの手法をとると、情報の取りこぼしが多くなり、取材時間も無駄に長くなります。

私の知る限りベテランインタビュアーほど、取材前の下調べに手を抜いていません。※しかし、例外もありますので例外の対応方法もそのうち書きたいと思います)

あくまでもこれは、私の経験からですが、

「相手から情報を引き出せばいい」と思って挑む取材は、トラブルにつながることが多いです。

  • 予定時間のオーバー
  • 取材対象者が想像以上に口下手
  • 想像外の回答に話の収集が付かない
  • 希望していた記事が上がってこないというクライアントからのクレーム  などです。

まとめ

  1. 媒体のジャンル把握・コアターゲットの把握
  2. クライアントとのコアターゲット・訴求力のある記事作成を打ち合わせ
  3. 取材対象者の情報読み込み

上に挙げた方法は、取材術の基礎の基礎だと私は考えています。

ただし、私のやり方が必ずしも絶対的な方法ではありません。

 

取材対象者の情報がなかなか得られないケースもあるでしょう。

さらには、クライアントにコアターゲットのプレゼンをするのは、ちょっとした技術も必要です。

 

ライターさんのなかには、クライアントからクレームがあって落ち込んでいる方もいらっしゃるかもしれません。

そのクレームに自分のコミュニケーション能力の有無、執筆センスの有無を引き合いに出して悩んでいませんか?

センスがないのではなく、ちょっと1.2あたりがミスしてしまったのかもしれません。

執筆はセンスだと思っている方もいるかもしれませんが、

ごく一般的な商業文章に至ってはセンスより事前準備をしたか・していないかがものをいいます。

 

取材は、これだけ数をこなしても私は未だに取材が苦手です。

苦手なので、できるだけ下準備をして臨んでいます。

でも、どんなに気を付けていても「相性」でしっくりこないクライアントもいるのも事実です。

そういったクライアントのかわし方も、少しずつお話しできたらいいなと思います。

すべて一度にアップすると今回は読みにくいので、とりあえず基礎だけまとめてみました。

もし、取材のたびに胃が痛いというライターさんは、参考にしていただけると幸いです。

それでは、また。